会えない |
「私のことなんか、なんとも思っていないんでしょう。」 「私に会えなくても、ちっとも寂しくなんかないんでしょう。 このまま一生会えなくても、 寂しくないの?」 彼女は、いつもより少し早口で、つまり、 少しすねたふうにそう言った。 男はだまっている。 だまったあとで、こうつぶやいた。 「一生会えないと思ったら寂しくない。」 「………。」 女はだまった。 手痛い別れの言葉でも予感するかのように、 眉をひそめた。 しかし、男はそのあともつぶやいた。 「明日会えないと思うと寂しいけど」 女は、不覚にも笑みを浮かべて、まただまってしまった。 |