静光発句集 平成十二年春  思いつきにつき専門的批評お断り(笑)

初花を探して歩く夕間際

宵の足つっと引き止む沈丁花

裾模様染めわけつ暮れ春の空

雨去りてやや霞みつつ星出づる

天神のきざはしを花舞いおりる

透き通る挿櫛のごと春の月

しづしづと夕陽落ちゆき菜花照る

一刻も惜しみて逢いし花の宵

古き猫こたつに入らず眠りおり

ひざの猫暖気とくしゃみ運び来る

れんぎょうの黄色目にしむ高速路

花吹雪惚れたる仲の宵がたり

菜の花の一束刈られ寝ておれり

流山関東平野田植え前

利根川ものたりと揺れて春暮るる

春の青晴れてほっこり昼の月

日暮れてしまわぬセーター丁度よし

つなぐ手のやや汗をかき春の暮れ

外套を車に置きて春の旅

ぬくき宵大きな肩にもたれて寝

何もかも新たにしたき四月の日

 

<常陸路通夜行>

弥生十日土浦の伯父往生す

満開を過ぎ雨の夜半逝去聞く

落花無情深夜逝去の驟雨かな

桜華散る雨夜や伯父の逝くを聞き

春の夜半受話器の向こう縁者の死

おじおばといとこ集いて春の通夜

それぞれに一世代経て花の通夜

喪の色に桜色添え声高し

弥生の夜いとこアドレス交し合い

弟の嫁とたがわれ春の笑

参列の長きに謝して春の経

二十年すぎて常陸の桜狩り

霞ヶ浦その名のごとく春の夕




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