おうま          
   逢魔が時




おそらくは

どんな女の中にも

いっぴきの魔物が棲んでいる



だが、

男たちはえてして

それよりも

心やさしい生き物なので



そんなもののありかには

気づかぬまま

甘美な夢を抱いて

わが手に得たと思いこんだり



あるいは

うっすらと気づいていながら

自分ならうまく飼いならしてゆけると

考えてみたりするのだ



しかし時おり、

そう、たぶん

夕暮れから真の闇に落ちてゆく瞬間に、

女のなかの魔物は

自らのさけびを抑えることができず

むくりと頭をもたげはじめる



ただその暗がりの中で

魔物の目は

哀しみに濡れているのだけれど



少しの勇気をもって

さしいだされる手のぬくもりを

待っているのだけれど



そして、それこそが

男と女がほんとうに

出会う時でもあるのだけれど……






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