翼を持つものたちへ



とべよ、重き翼よ。



少々の破れと、いたみと汚れの残る羽を、

嘴でつくろったら、


あるかぎりの力で、その足を蹴って飛び立つのだ。



あの高みをめざして発てば、

空には強い風が舞っているかもしれないが、



雨やいかづちに打たれ、

心ないものにさえぎられ、

あるいは自らが力尽きて、

いずれかの波間へ墜ちてしまうかもしれないが

またこの地上に叩きつけられてしまうかもしれないが

それでもここで、地の虫を掘り返しているだけの今よりは

ずっと後悔が少ないではないか。



より高い位置をとぶときは、

そこからでなければ見えぬものが、


何かきっと見えるだろう。

自力でゆく者こそ孤独であることは、

どこにいても同じなのだ。


とどまっていても、

少し先の未来を、誰にも知り得ぬことは同じだろう。




何を恐れている?

さあ、明日と言わず、そのうちと言わず、

とべ、重き翼の持ち主よ。




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