「こどもだなあ、君は……」
 
 
君は女に対して、
 
よくも悪くも甘えん坊だな。
 
 
 
よくも悪くも、だぜ。
 
女は、そういう君が可愛くて寄って来る。
 
 
 
しかし、君はその女に、身も心も甘えてしまう。
 
なんでも、自分のわがままを受け入れてくれると思っている。
 
 
 
しかしね、
 
女も人間だ。
 
しかも我々とつきあうようなのは、
 
たかだかニ、三十年しか生きていない、未熟な人間だ。
 
君のお袋さんでも、観音様でもない。
 
その日その日を懸命に生きている、ただのひとだ。
 
それを思ってやらないと、女もつらくなってしまうんじゃないのかな。
 
 
 
男も女もない。
 
誰でも、
 
明日のことさえわからなくて必死なんだ。
 
苦しんだり悩んだり、傷つけあったり……
 
まあ、たまには、寄りかかったりしてさ、 
 
それでどうにか、
 
いちにんまえに生きていくんだ。
 
 
 
私は最近、そんなふうに思うようになってきた。
 
 
 
 
 
                 (誠抄・未掲載「あずま男」文中より抜粋)
 
 




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