| 傷 口 |
| そんなに傷ついて かわいそうに……… 赤ちゃんの時のように まっさらな肌ではなくなってしまったね でも僕は あなたのその傷口を みにくいとは思わないよ 腫れたり膿んだり血が流れたりして ちゃんとふさがるまでは そりゃあ、あんまりみっともいいもんじゃないけどさ それでも君が 頑張って生きていてくれることが きょうはとても嬉しいよ だってほら 僕にだって ここと、ここと、 それからこんなところにも 傷あとがたくさんあるもん ついつい、かさぶたをはがして 変に大きくしてしまったこともあるけどね 陽気がいやな感じのときには しくしくと痛むようなときもあるけどね まあ、これも過去戦歴の勲章だと思って とっておくしかないのさ 赤ん坊の時のまんま 何の怪我もしないで大人になるやつなんて いるもんかな？ そんな純粋培養の無菌室育ちみたいなやつは 僕はどうも信用できないね 話がかみあわなさそうだもん あ、でも、 傷の消毒はまめにしておいたほうがいいよ 酒で清めたい時にはなるべくつきあうよ 君が痛がるのを眺めて 横でにやにや飲んでるだけだと思うけどさ それじゃ、また 何か泣き言があったら話してこいよ でも医者じゃないから、あまりあてにはするなよ 気休めくらいならできると思うよ それじゃ、ホントにまたな |