豊玉発句集 文久三年春
有名な土方歳三の俳句集です。
いくつかのテーマごとに分けてみました。
大文字のものは単に私の好きな句です。
原文はかな体で、昔の書き方ですから濁点はありません。
夏や秋や冬の句も、読んでみたかったですねえ。



  <雪>

おもしろき夜着の列や今朝の雪

横に行足跡はなし朝の雪

朝雪の盛りを知らず伝馬町

井伊公
ふりながら消ゆる雪あり上已こそ

春ははるきのふの雪も今日は解


  <月>

三日月の水の底照る春の雨

水の北山の南や春の月

山門を見越して見ゆる春の月

公用に出て行みちや春の月

あばら屋に寝て居てさむし春の月


  <花>

白牡丹月夜月夜に染めてほし

露のふる先にのぼるや稲の花

人の世のものとは見へぬ梅の花

我年も花に咲れて尚古し

年々に折られて梅のすがた哉

菜の花のすだれに登る朝日かな

二三輪はつ花だけはとりはやす

咲ぶりに寒けは見へず梅の花

岡に居て呑むのも今日の花見哉

梅の花一輪咲てもうめはうめ

武蔵野やつよふ出てくる花見酒

梅の花咲るしだけにさいてちる


  <水>

さしむかふ心は清き水かがみ

水音に添てききけり川千鳥

玉川に鮎つり来るや彼岸かな

春雨や客を返して客に行

来た人にもらひあくびや春の雨


  <人>

裏表なきは君子の扇かな

手のひらを硯にやせん春の山

春の草五色までは覚えけり

しれば迷ひしなければ迷はぬ恋の道
  しれば迷ひしらねば迷ふ法の道

願ふ事あるかも知らず火取虫

年礼に出て行空やとんびたこ

暖かなかき根のそばやいかとほり

今日も今日たこのうなりや夕げせん

うぐひすやはたきの音もつひやめる

朧ともいはで春立つ年の内

朝茶呑てそちこちすれば霞けり

春の夜はむづかしからぬ噺かな




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写真提供:幕末維新新選組副長 土方歳三様